由水十久 Yuusuitoku
二代目由水十久(ゆうすいとく)は、加賀友禅を代表する現代染色作家の一人です。初代由水十久の次男として1952年に石川県金沢市に生まれ、多摩美術大学で日本画を学びました。在学中は日本画壇の巨匠である加山又造、上野泰郎の指導を受け、絵画的な表現力と高度な造形感覚を培いました。
大学卒業後は加賀友禅の道へ進み、1987年に独立。1989年に二代由水十久を襲名しました。以後、伝統加賀友禅工芸展において金賞をはじめ数々の賞を受賞し、1997年には伝統工芸士に認定されるなど、加賀友禅界を代表する作家として高い評価を得ています。
加賀友禅は本来、四季の草花や自然風景を写実的に描くことを特徴とします。しかし由水十久家は、初代以来「人物を描く加賀友禅」という独自の芸術世界を築いてきました。二代目もその精神を受け継ぎ、童子、古典文学、能楽、歴史物語などを題材とした格調高い作品を数多く制作しています。
その作品には、日本画で培われた優れた描写力が生かされています。人物の表情や衣裳の文様、髪の毛の一本一本に至るまで繊細に描き込まれ、着物でありながら絵巻物や日本画を見るかのような豊かな物語性を備えています。
また、加賀友禅特有の美しいぼかし染めと鮮やかな色彩を駆使しながら、伝統を守るだけでなく現代的な感性も取り入れています。その作品は国内のみならず海外でも紹介され、日本の染織芸術の魅力を広く発信しています。
二代目由水十久は、初代が築き上げた人物友禅の世界を継承しながら、新たな時代の表現へと発展させてきました。その作品は、加賀友禅の伝統と日本文化の豊かな物語性を今に伝える優れた芸術作品として高く評価されています。
わらべ Warabe
[色留袖 Iro Tomesode]
二代目由水十久 Yuusuitoku
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《わらべ》は、二代目由水十久が受け継ぐ「人物を描く加賀友禅」の世界を象徴する色留袖です。穏やかな水色の地に、無邪気に遊ぶ童子たちの姿を描いた本作は、由水十久ならではの物語性と詩情に満ちた作品として高く評価されています。
画面には、雅やかな衣裳をまとった二人の童子が描かれています。一人は釣竿を手にし、もう一人は飾りの付いた杖を持ちながら舞うような仕草を見せています。愛らしくも気品のある表情には、古典絵巻や大和絵に通じる日本的な美意識が感じられます。
二代目由水十久は、加賀友禅の伝統的な草花表現にとどまらず、人物を主題とした独自の友禅芸術を発展させました。本作にもその真骨頂が表れており、童子たちは単なる装飾的なモチーフではなく、一つの物語を語る主人公として生き生きと描かれています。
また、童子たちの足元を流れるように配された裂取文様も本作の大きな魅力です。亀甲や花文様などの古典意匠を織り込んだ優雅な文様帯は、画面に豊かな奥行きを与えるとともに、平安王朝文化を思わせる格調高い雰囲気を醸し出しています。
色彩は全体を通じて柔らかく上品にまとめられています。淡い水色の地色は静謐な空気を生み出し、童子たちの衣裳に用いられた黄や緑、金彩が優しく映えています。その調和の取れた色彩設計には、日本画を学んだ由水十久の高い美意識が息づいています。
さらに本作には、加賀友禅特有の繊細なぼかし染めや手描きによる緻密な表現が随所に施されています。童子の顔立ちや衣裳の細部、文様の一つひとつに至るまで丁寧に描き込まれており、着物でありながら絵画作品として鑑賞できる完成度を備えています。
《わらべ》は、子どもたちの無垢な姿を通して、日本人が古くから大切にしてきた幸福や平和への願いを表現した作品です。そこには、古典文化への深い敬意と、人の心を和ませる物語性を大切にした二代目由水十久の芸術精神が込められています。
本作は、加賀友禅が持つ優美な染色技術と、由水十久家が受け継いできた人物表現の魅力を今に伝える優品であり、現代加賀友禅を代表する作品の一つとして高く評価されています。